「チュリモフ・ゲラシメンコ彗星」の水と地球の海水は異なる同位体組成である事が判明
- 2014/12/12
- 23:27
ESAの彗星探査機「ロゼッタ」が「チュリモフ・ゲラシメンコ彗星」の彗星核から放出される水分から同位体比率を求めた結果、地球の水とは大きく異なる結果が示されたとK. Altweggらの研究チームが発表した。この事は、地球の水の由来は彗星ではなく小惑星であるという近年の説を裏付ける結果となる。
論文:K. Altwegg, et.al. "67P/Churyumov-Gerasimenko, a Jupiter family comet with a high D/H ratio" (2014)

各天体における軽水素と重水素の比率。今回調べられた「チュリモフ・ゲラシメンコ彗星」の値は地球のそれとは大きく離れている。
画像引用元 (ESA)
地球は誕生直後は水が蒸発するほど高温であった。よって地球が誕生するのに関与した微惑星が、現在地球表面の70%を覆う海の起源であるとはおよそ考え難い。現在最も主力のシナリオでは、地球がある程度冷却された後に衝突した小天体がもたらしたと考えられている。しかし、小惑星と彗星では太陽系誕生時に存在していた位置が大きく異なるため、どちらが起源であるかを推定する必要がある。単純に考えれば、氷を極めて多く含むす彗星が水の起源であろうとなる。
この時彗星は厄介な観測対象である。小惑星は、地球に比較的近い位置にある小惑星帯に多数の天体があるため、ここから地球に衝突するコースを築くのは簡単である。また、小惑星は隕石によって直接観測に行かずとも物質を得る事が出来るという利点もある。一方彗星の場合、現在地球に接近するようなコースをとる彗星は、太陽系の最も外側にあるオールトの雲を起源にしていると考えられるが、あまりにも遠すぎるので地球に衝突する事は滅多にない。地球に存在する物質の推定から、海の誕生は地球誕生から数百万年程度しかかからなかったと考えられているためこれは問題である。逆に地球に衝突する頻度が高いと思われる木星族の彗星は、なかなか地球に近づかないため探査が困難であった。これまで探査出来た「本田・ムルコス・パイドゥシャーコヴァー彗星」と「ハートレー第2彗星」という木星族の彗星は地球の水と近い成分である事が示されていたものの、数が2つとかなり少なかった。また、多数の小惑星を観察する限り、より地球の水に近いのは小惑星帯の小惑星という結果がこれまで示されていた。
2014年にESAの彗星探査機「ロゼッタ」が接近探査を行った「チュリモフ・ゲラシメンコ彗星」は木星族の彗星である。彗星核を周回し宇宙空間に放出される水から重水素 (2H) の濃度を調べた結果、軽水素 (1H) に対する同位体比が (5.3 ± 0.7)×10-4 と、地球の約3倍というかなりかけ離れた数値が出た。これは既に調べられているどの彗星よりも高い濃度である。
この結果は、木星族の彗星の起源は多様である可能性を示し、彗星ではなく小惑星が地球の水の由来であるという考えの更なる裏付けとなる。
論文:K. Altwegg, et.al. "67P/Churyumov-Gerasimenko, a Jupiter family comet with a high D/H ratio" (2014)

各天体における軽水素と重水素の比率。今回調べられた「チュリモフ・ゲラシメンコ彗星」の値は地球のそれとは大きく離れている。
画像引用元 (ESA)
地球は誕生直後は水が蒸発するほど高温であった。よって地球が誕生するのに関与した微惑星が、現在地球表面の70%を覆う海の起源であるとはおよそ考え難い。現在最も主力のシナリオでは、地球がある程度冷却された後に衝突した小天体がもたらしたと考えられている。しかし、小惑星と彗星では太陽系誕生時に存在していた位置が大きく異なるため、どちらが起源であるかを推定する必要がある。単純に考えれば、氷を極めて多く含むす彗星が水の起源であろうとなる。
この時彗星は厄介な観測対象である。小惑星は、地球に比較的近い位置にある小惑星帯に多数の天体があるため、ここから地球に衝突するコースを築くのは簡単である。また、小惑星は隕石によって直接観測に行かずとも物質を得る事が出来るという利点もある。一方彗星の場合、現在地球に接近するようなコースをとる彗星は、太陽系の最も外側にあるオールトの雲を起源にしていると考えられるが、あまりにも遠すぎるので地球に衝突する事は滅多にない。地球に存在する物質の推定から、海の誕生は地球誕生から数百万年程度しかかからなかったと考えられているためこれは問題である。逆に地球に衝突する頻度が高いと思われる木星族の彗星は、なかなか地球に近づかないため探査が困難であった。これまで探査出来た「本田・ムルコス・パイドゥシャーコヴァー彗星」と「ハートレー第2彗星」という木星族の彗星は地球の水と近い成分である事が示されていたものの、数が2つとかなり少なかった。また、多数の小惑星を観察する限り、より地球の水に近いのは小惑星帯の小惑星という結果がこれまで示されていた。
2014年にESAの彗星探査機「ロゼッタ」が接近探査を行った「チュリモフ・ゲラシメンコ彗星」は木星族の彗星である。彗星核を周回し宇宙空間に放出される水から重水素 (2H) の濃度を調べた結果、軽水素 (1H) に対する同位体比が (5.3 ± 0.7)×10-4 と、地球の約3倍というかなりかけ離れた数値が出た。これは既に調べられているどの彗星よりも高い濃度である。
この結果は、木星族の彗星の起源は多様である可能性を示し、彗星ではなく小惑星が地球の水の由来であるという考えの更なる裏付けとなる。
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