がん細胞が血管の内皮細胞を細胞死させる事を発見 がんの転移のメカニズムの一部か
- 2016/08/11
- 23:42
がん細胞は血管の内壁である「内皮細胞」をネクロトーシスさせる作用がある事をBoris Strilicらの研究チームが発見した。
論文:Boris Strilic, et.al. "Tumour-cell-induced endothelial cell necroptosis via death receptor 6 promotes metastasis" (2016)
がん細胞が内皮細胞のネクロトーシスを招く事を説明したダイヤグラム。
画像引用元 (Max-Planck-Gesellschaft)
最もよく知られている病気であり、主因な死因でもある「がん」は、異常が生じた細胞が無制限に増殖する事が病原性となる。がん細胞が異常増殖する事で、身体のエネルギーが無駄に浪費されたり、正常な組織が圧迫される事で最終的には衰弱死に至る。
ところで、がんは最初に発生した原発性のがんで死に至る事はあまりなく、多くはがんが別の組織に転移した後が致命的である。この転移現象は、がん細胞が血流に乗って別の組織へと輸送される事で発生する。しかしながら、これが起こるにはがん細胞が血管を通過する必要がある。このメカニズムの詳細は不明であった。
Boris Strilicらの研究チームは、マウスの細胞を用いてこのメカニズムの一部に答えを見出した。マウスのがん細胞と、血管を構成する細胞の内、血流に直接触れる内壁である「内皮細胞」を用いて実験を行った。その結果、がん細胞と内皮細胞の接触で、内皮細胞が細胞死している事を発見した。詳しく調べた結果、内皮細胞はプログラムされた細胞死の1つである「ネクロトーシス」を起こしている事が分かった。内皮細胞のネクロトーシスは、内皮細胞の「デスレセプター6 (Death Receptor 6・DR6)」によって誘導されており、がん細胞が表面に持つたんぱく質であるAPPとDR6が接触する事で内皮細胞のネクロトーシスを招く事が分かった。これはDR6を欠くように遺伝子改変された内皮細胞では転移率が低い事からも支持される結果である。がん細胞は、内皮細胞のネクロトーシスにより直接開いた穴だけでなく、穴を塞ぐようにずれて生じた内皮細胞の隙間も利用すると考えられる。
今回の実験は、内皮細胞の細胞死によって穴が開いた領域に、どのようにしてがん細胞が転移するかまでは明らかにされていない。これが直接転移するのか、あるいは間接的に作用するのかは今後の研究が待たれる。また、DR6を人工的に遮断すればがん細胞の転移は少なくなるかもしれないが、それが悪影響を及ぼす可能性も検討しなければならない。
論文:Boris Strilic, et.al. "Tumour-cell-induced endothelial cell necroptosis via death receptor 6 promotes metastasis" (2016)
がん細胞が内皮細胞のネクロトーシスを招く事を説明したダイヤグラム。
画像引用元 (Max-Planck-Gesellschaft)
最もよく知られている病気であり、主因な死因でもある「がん」は、異常が生じた細胞が無制限に増殖する事が病原性となる。がん細胞が異常増殖する事で、身体のエネルギーが無駄に浪費されたり、正常な組織が圧迫される事で最終的には衰弱死に至る。
ところで、がんは最初に発生した原発性のがんで死に至る事はあまりなく、多くはがんが別の組織に転移した後が致命的である。この転移現象は、がん細胞が血流に乗って別の組織へと輸送される事で発生する。しかしながら、これが起こるにはがん細胞が血管を通過する必要がある。このメカニズムの詳細は不明であった。
Boris Strilicらの研究チームは、マウスの細胞を用いてこのメカニズムの一部に答えを見出した。マウスのがん細胞と、血管を構成する細胞の内、血流に直接触れる内壁である「内皮細胞」を用いて実験を行った。その結果、がん細胞と内皮細胞の接触で、内皮細胞が細胞死している事を発見した。詳しく調べた結果、内皮細胞はプログラムされた細胞死の1つである「ネクロトーシス」を起こしている事が分かった。内皮細胞のネクロトーシスは、内皮細胞の「デスレセプター6 (Death Receptor 6・DR6)」によって誘導されており、がん細胞が表面に持つたんぱく質であるAPPとDR6が接触する事で内皮細胞のネクロトーシスを招く事が分かった。これはDR6を欠くように遺伝子改変された内皮細胞では転移率が低い事からも支持される結果である。がん細胞は、内皮細胞のネクロトーシスにより直接開いた穴だけでなく、穴を塞ぐようにずれて生じた内皮細胞の隙間も利用すると考えられる。
今回の実験は、内皮細胞の細胞死によって穴が開いた領域に、どのようにしてがん細胞が転移するかまでは明らかにされていない。これが直接転移するのか、あるいは間接的に作用するのかは今後の研究が待たれる。また、DR6を人工的に遮断すればがん細胞の転移は少なくなるかもしれないが、それが悪影響を及ぼす可能性も検討しなければならない。
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